JAS39C/D
グリペン-ロット3
グリペンが採用された当初では考えられなかった中立政策放棄により、21世紀現在ではスウェーデンの基本政策が大きな転換期を迎えています。そのため、グリペンに対しても少なからず影響を与えており、要求される能力にも時代の変化が反映されたものとなっています。 JAS39C/Dは2002年4月29日に初飛行が行われた最新型のグリペンであり(107号機)、様々なアップグレードが行われました。 主なアップグレードは以下の通り ・ブローブアンドドローグ式空中給油装置の標準装備 JAS39A/Bには空中給油装置はありません。本来中立国であるスウェーデンには必要の無い装置でした。しかしNATO参加にするとならば他国の基地へ展開し、軍事活動に従事しなければなりません。その際、空中給油装置が無いとなると、元来戦闘行動半径がさほど大きくないグリペンでは作戦行動に大きな支障をもたらしてしまいます。 湾岸戦争時のイタリア空軍のように、空中給油ができずに帰るなどという醜態をさらすわけにはいきません。 また、世界的に標準装備である空中給油装置は輸出市場においても重要な機能の一つです。 ・LINK16統合戦術情報分配システム(JTIDS) 従来のグリペンのデータリンクシステムは地上管制/S100アーガス早期警戒機との防空任務に重きをおかれていました。 LINK16 JTIDS、すなわち統合戦術情報分配システムは、米国の戦闘機やE-3セントリーAWACSをはじめとする同盟諸国の地上車両、戦闘艦等を、陸海空問わずにネットワーク化する米国を中心とする国々標準のデータリンクシステムです。 現代の航空戦は支援機によるサポートを受けられるのと受けられないとでは数十倍の開きがあると言っても過言ではありません。 詳しくはF-15E ストライクウイング JTIDSをご参照ください。 ・新型のIFF 航空戦始まって以来、敵味方の識別は命題とも言える難題でした。空対空、空対地、ともに目視圏外から正確に攻撃できるようになった今日、敵味方の識別はより一層難しくなり、湾岸戦争において多国籍軍兵士最大の死因はブルーオンブルー(友軍殺し)であったとされています。 IFFすなわち敵味方識別装置は、「お前は味方か?」という信号を発し、「味方だ」という返答を受け取ったならば友軍であると判別します。 返答が無かったとしてもそれが敵機であるとは限りません。民間機には当然IFFはついておりませんし、友軍であってもIFFトランスポンダー(返答部)が正常動作しているとは限らないためです。 IFF誤忍による誤射としては、イラク北部で警戒中のF-15がAWACSの指令により友軍のUH-60を撃墜してしまった事件が代表的でしょう。このときUH-60はIFFのスイッチを切っていたとされています。 IFFは100%信頼できるものではありませんが、やはりNATO軍として活動するには無くてはならない改良の一つです。 ・GPSナビゲーションシステム JAS39Aが就役した頃はGPS衛星の数も十分ではなく、今ほどポピュラーなものではありませんでした。グリペン以外でも、GPS衛星を打ち上げているアメリカでさえ航空機にGPS端末を装備する航空機は多くありませんでした。戦略爆撃機のクルーは自費で民生品GPS端末を使っていたとも言われています。 現在アメリカではGPS端末を持つ機体が大幅に増えており、JAS39CでもGPS端末が標準装備となり、高い航法能力を得ることができました。 ・電子戦装備/SEAD(対防空網制圧) MIDAS(Multifunction Defensive Avionics System;多機能防衛アビオニクスシステム)を意味する電子戦システムの装備が新たに加わりました。 ジャミングポッドを装備することにより生存性が大きく高まります。 そしてSEAD。対防空網制圧が可能になります。グリペンは搭載力が限られているためハンターキラーチームを組み同ミッションに当たることとなります。 ハンターキラーとは、2機がデータリンクを通じペアになり、ハンター機は対レーダー探知および目標指示、ジャミングを行い、もう1機のキラーが実際に対レーダーミサイルを発射するという戦術を意味します。 ...長距離侵攻に必須な空中給油装置、そしてNATO標準であるJTIDSデータリンクの採用、新型IFFへの換装などは明らかにNATOや輸出市場も意識しており、調停活動への派兵や、諸外国への売り込みに対する意欲の現れとも見て取れます。なお64機の生産を予定しており、107号機はテストベッドであるため108号機から軍へ引き渡されます。 また、すでに生産された就役中のグリペンに関しても同等のアップグレードが施される予定です。 |
||||||||||||||||
|